日立のマイクロ波センサによる不審者検知 -- どこが新しい??

本日、日経朝刊(15面)で、日立製作所マイクロ波によるアクティブセンサを使って、不審者を雨が降っていても検知する技術を開発した、と報じた。監視技術の一連技術であるが、このような技術開発は2001年9月の米国の同時多発テロ以前からあったが、テロ以降は、新聞で取り上げられる機会が増えた。
今回のマイクロ波によるセンシング技術であるが、マイクロ波というのは、いろいろ幅があると思うが、一般的には30〜300GHzの周波数をもつミリ波が主流であろう。日立は自動車のプリクラッシュ用のミリ波センサを開発しており、そのミリ波センサの技術を使ったものと推測される。ミリ波によるセンシング技術は、芝浦工大などの大学や富士通などの企業でも研究開発されているが、なにが違うのだろう?ここはよくわからない。日経の記者もそこは不勉強のようだ。雨に強い、夜間でもできる、というのはミリ波一般の特長なので、特筆に価しない。もし、あるとするならば、人を検知できる点であろう。一般にミリ波センサでは、ミリ波を吸収しやすい物体には不向きで、人のように着ている服の材質などによりその反射特性が変わるために、検知できたりでんきなかったりする問題がある。それを解決したのだろうか?普通は「No」だろう。アクティブセンシングでも、反射率の違うものを安定に、というのはどちらかというとミリ波センサの技術というより、後段の信号処理の部分の性能次第である。この信号処理の部分はそんな簡単にできるものではない。
さて、ミリ波を使って、10m四方の人を検知できるのは、初めて、というニュアンスであるが、昨年の今頃に富士通から、画像認識技術を使って、普通のカメラで夜間も雨天もでき、かつ50m四方の広域まで人を認識できる、パッシブセンシング技術が開発されたニュースがあったが、それに比べても見劣りする話だ。ちょっと日経の記者さんの不勉強ぶりには閉口する。
それにしても、日立はいつも実用化は2年内だとか、本当に見通しが立っているかどうかわからない技術をオープンにする癖がある。一種のマーケティング戦略なのかもしれないが、今回のように何が新しいのかわからない技術を「ひけらかす」のはいかがなものか?