iPS細胞の安全性向上 長短をフェアに扱わないメディアに疑問

iPS細胞 安全性を高める 京大・山中教授ら新手法(日経朝刊1面、38面)
日本先行技術としてあげられる新型万能細胞(iPS細胞)の生成技術であるが、安全性を高めるために、発がんの可能性のあるウィルスの細胞を使わずに、これまで遺伝子治療にも使ってきた、マウス胎児の皮膚細胞を使った生成方式を開発した、と報じた。もちろん、いいこと尽くめではなく、生成効率はウィルスを使う場合に比べて悪い。しかし、アプローチとしては極めてスタンダードなものだ。当然、安全性を考慮した生成を行わないと、再生医療に不安点が多く残ってしまう。今回の発表は、正直、何がいいたいのかわからない。iPS細胞生成でノーベル賞でも受賞できると意気込んでいるのだろうか。安全性は当然だが、生成効率も従来のウィルス方式と同等もしくはそれ以上のものでないと、追従する他国技術に勝てない。また、実用という意味でも心もとない。
1面では、いいことばかりが目立つが、38面には、マウス胎児の皮膚細胞でも発がん性がないとは言い切れない不安を書いている。それが正しい見方だろう。とすると、益々この発表の意図するところが不明。また、日経も1面で煽って、38面という目につきにくいところに「保険」を仕込むとはあまりフェアな取り上げ方ではない。科学技術には必ず絶対はない。長短を明確にして、初めて実用の道が開ける。