抗体医薬の開発 実用化促進のために国は助成すべき

抗体医療、少量でがん治療 協和キリン、コスト減に道(日経朝刊11面 技術ウォッチ欄)
協和キリンが名古屋市立大学の上田隆三教授のグループと共同で抗体医薬でがん治療の開発に取り組んでいる、という話題である。抗体は、体内に侵入する異物を攻撃するタンパク質。人間の免疫機能を支える重要な要素である。その抗体を利用して免疫機能を向上させるのが抗体医薬である。そもそも人間が持っている免疫機能でがんなどの異物を攻撃するものであるから副作用も少ないとされている。特に、副作用などが懸念される抗がん剤治療に代わって、高い効果が期待できる。ただし、現段階では量産技術が追い付かず、抗がん剤よりも10倍ほど価格が高いとのこと。この価格低減技術が、先行する欧米企業への切り札となる。協和キリンは10月に協和発酵キリンファーマが合併した会社。特にキリンファーマの強みである抗体生産技術がこの低価格化に貢献できるのではないか、と期待されている。現在取り組んでいるのは血液がんの一種、成人T細胞白血病(ALT)。以前、「オキナワモズク」の色素であるフコキサンチンが成人T細胞白血病の抑制に効果がある、という話を取り上げたが、ここでも白血病中でも治療の難しいこの病気に効果があるとのこと。
抗体医薬の技術開発は、欧米ではかなり進んでおり、日本にも薬事の関係でまだそれほど広がっていないものの主流になるだけの効果をもっている。日本もここにきて抗体医薬の研究開発を促進するようになった。新薬開発が薬品会社の収入源になるだけに必死である。ただ、抗体医薬の場合、個人の抗体へ働きかける関係もあり誰でも効果が顕著であるわけではない。個人差を超えて効果を確認する治験に時間が掛かり、実用までの道は険しい。今回の新薬も2015年が発売目標。もっと早くなるとの意気込みはあるが、あと7年。長生きできるかどうかわからない。毎度書くが、国はこういう技術開発に積極的に金を提供すべきだ。定額給付金のばらまきという愚行に走っている場合ではない。