火山の二酸化硫黄ガス 噴煙総量、瞬時に推定(日経産業9面)

東京大学の森俊哉准教授の研究グループが、火山から発生する有毒な二酸化硫黄ガスの量を紫外線画像を使って推定する技術を開発した。二酸化硫黄は太陽光線中の紫外線のある波長のみを吸収する性質があり、その紫外線の波長を紫外線領域をフィルタなどを使って撮像するカメラを開発、同時に紫外線を反射するエーロゾルという粉塵の影響も考慮し、濃さの数十分の1の誤差で推測できるようにした、という。撮像には、紫外線領域の波長を様々な帯域で計測するためか1枚撮影するのに2、3秒かかるというが、これまでの点計測の方式などに比べると、噴煙の状況も同時に観察できる画像方式のほうがメリットが大きい。
この技術の肝は、紫外線を反射するエーロゾルの影響をどう見積もるかである。影響を受けないならば、他の紫外線の波長と吸収された波長との相対差から二酸化硫黄の量を推定するのはさほど難しい話ではないが、外乱物が存在するとやっかいだ。いつも同じだけ反射するわけでもないので、画像中の他の画素での波長の吸収状況を考慮し、正規化することになるのだろうが、その分データが鈍ってしまう。精度が悪くなる。ただ、濃度の数十分の1(「数」という数が大きな意味を持っているのだが、「数」というあいまいさを残しているのが影響除去・推定の難しさを物語っている)が実用に耐えうるものであるならば、問題ないのだが。
本技術は、火山への適用だけでなく、工場などの有害物排出をチェックする装置としても応用が利くという。精度とコストとの費用対効果が普及への大きなハードルといえよう。