東大と東北大 「分子のり」開発 がん治療に活用へ(日経産業11面)

東京大学東北大学の研究グループが核酸などの生体分子同士を接着する「分子のり」を開発した、と報じた。この「のり」は分子を複数固めたり、分子集合体の分解を防止したりするなど、生体分子の「のり」の役割を果たすもの。この「のり」を使って、がん細胞中へ注入し、細胞分裂を抑えたり、病細胞を「集中攻撃」するために、適切な部分に適切な量の薬剤を注入できる薬物送達システム(DDS:Drug Delivery System)への応用が期待できる、とのこと。確かに期待できる技術である。特に、薬剤の患部注入で、注入後に薬剤を「のり」で固定し、周辺への拡散を防げれば効果は上がる可能性がある。現在は豚の脳細胞から取り出した微小管での実験で機能確認段階だが、(気の毒だが)マウス等の生体への効果確認を早期に期待したい。
今回の「のり」の成分は、枝分かれの多いデンドリマー という樹状高分子。この高分子だけでは、生体分子の接着は難しく、その枝先に水素結合しやすいグアニジンという爆薬の原料にもなる有機化合物を合成したようだ。いろいろな試行錯誤によって得られた結果なのだろうが、一般にデンドリマーは複雑な構造であるゆえ合成するのが難しいので、生成コストが今後の課題の一つだろう。この課題をクリアして製品として世にでてくるのは、早くて5年後ぐらいだろう。