人工知能1000個が「多数決」で予測 薬の最適な製剤方法(日経産業1面)

第一三共星薬科大学と共同で、試行錯誤の必要な製剤方法を複数の人工知能モジュールで推論させ、手法を平準化する方法を開発した、と報じた。これまでは、製剤方法の発見にはベテランが担当し、経験に基づき数ヶ月かけて行ってきたが、そもそも薬品の添加物の種類、量などにより方法としてはありえないものまで含まれていたという。この無駄なプロセスを今回の方法であらかじめ排除しておき、効率のよい製剤方法の発見につなげたい、という目論見である。
人工知能の研究でも1000個というモジュールを並列で動かし、推論させることはなかったというが、この話は力技でもあるので、大きな意味を持っているものではない。そもそも、ベテランが無駄な実験をして貴重な工数を費やしているか、という問題設定が合っているのかが疑問である。
確かに、経験の浅い研究者、開発者はいくらベテランが教えても無駄な実験、試行を行ってしまうケースがある。しかし、実はこれも無駄ではなく、この失敗でなぜだめだったか、言葉ではなく体験から学ぶものが多く、ベテランに育てる上でも重要なプロセスの一つであると考える。
なんでもかんでも、無駄を排除することで効率を目指す傾向があるが、このように教育においては無駄なプロセスなどはない。もちろん、やりっぱなしでは無駄になることが多いこともわかるが、ベテランなどの経験者の指導の下、試行錯誤の「無駄」は次のベテランを育てる重要なもの。人工知能の力技でも見えない意外な発見はこのようなベテランから作り上げることが多い。このような技術の使い道を誤っているのではないか。