電子書籍ビジネス始動 国内出版、IT業界と連携(日経産業4面)

日経産業の解説記事。8月5日に国内の出版業者が中心に立ち上げた「雑誌コンテンツデジタル推進コンソーシアム」を皮切りに電子書籍のビジネスが「やっと」スタートする、かな?という話である。米・アマゾン・ドット・コムの勢いに危機感を感じた国内出版業者の焦りとも見える動きである。
アマゾンが仕掛ける電子書籍は欧米ではまだ主流にはならないものの、順調に伸びている。端末・Kindleが売れているかどうかはともかくとして、書籍の電子化、データの標準化もアマゾンの動きに呼応して着実に進んでいる。電子書籍の売りはやはり使い勝手と価格。特に国内出版業者にとっては、価格を電子化によって半額にして売るアマゾンの動きに警戒感を持っている様子だ。再販制度についても利益を守ろうとする国内出版業者にとって電子化による利益率の低下、それに加えて著作権の問題、不正コピーへの対策など価格に関わる問題が山のように押し寄せてくるのを日本語というバーバルな部分でなんとかアマゾンの国内進出を止めているような様相である。
今回のコンソーシアム結束の背景には、そのためにも国内出版業者の結束を強め、「裏切りモノ」を出さないように互いに監視しているかのようにも見える。一社でもアマゾンとともに電子化の流れに乗ってしまえば、あっという間に国内での電子書籍の流れに巻き込まれ、価格破壊から出版社の浮き沈みが始まるからだろう。
今回のコンソーシアムには、電機業界やIT業界も巻き込んで、単に書籍コンテンツの電子化という話だけではなく、対Kindleというハードへにも警戒心を煽ろうという魂胆か。ただ、電機業界などでは、ハードだけを作るという商売では、安価なKindleや対抗馬の英インターリード社の端末などに対抗できるとは思っていないだろう。コンテンツ+端末という売り方でないと利益率は悪い。電機業界はコンソーシアムに参加はするものの、出版業界ほど真剣味があるようには思えない。
今後、日本の出版業界はこのコンソーシアムに縛られて、アマゾンが進める電子化の波にさらに1歩も2歩も遅れをとるかもしれない。それよりも、電子化に前向きに取り組み、その中で利益を確保する姿勢をいち早く表に見せる業者がアマゾンに対抗、もしくは協調できるだろう。少々閉塞感の漂う国内状況には、うんざり。