「準静電界通信」の技術供与(日経産業1面)

ベンチャー企業・QファクターはソニーOBの開発した「準静電界通信」いわゆる人体通信の技術を電機メーカにライセンスを供与したり、共同開発を持ちかけるビジネスを開始する、と報じた。今回の人体通信の技術は、NTTコミュニケーションズのものと違い、電界方式と呼ばれるもの。人体を包む準静電界を媒体としてデータを送受信する方法で、NTTコムと違い物体に触らないでも通信ができる、というものである。この技術は、ソニーのOBである滝口清昭氏がソニー時代に取得した特許を東大に赴任した際に継承した(退職金代り?制度?契約?)ようである。この特許をベースにQファクターが商売をするという形態である。
人体がそもそも有する準静電界を利用するという発想は面白いが、それと他の人体通信の技術とのメリットは明確になるのだろうか。準静電界を利用することで送受信機の大きさや消費電力はある程度抑えられることは容易に類推できるが、送受信機を持つ以上、五十歩百歩。それはそれほど大きなメリットではない。
接触で送受信できるというのは、メリットのようでもありデメリットでもある。ドアノブのようなものを触ることで送受信が開始される、といったトリガがあるか否かはシステム設計上重要なことだ。当然、トリガがあったことに越したことがない。いつ送受信されているかがわからない構造だと不用意にデータを流していることになりかねない。また、アクティブ型の電子タグとの違いも不明瞭だ。家電応用ではBluetoothとの違いが何かを押さえるべきだろう。
ただ、人体通信はまだ明確な用途が見えていないので、未知数だが、技術の面白さは捨てがたい。用途を発掘するにせよ、運用ノウハウの蓄積が重要だ。運用ノウハウをためつつあるNTTコムに対して、Qファクターがどこまで対抗できるか。この手の技術は運用して強くなるもの。現時点では、先行するNTTコムに大きな差を開けられていると謙虚に構え、欲を出さずにパートナーを多く探すことが重要だろう。